第8章 現実
「リヴァイは訓練兵団へ行っていないんだよね?なのに何で、あんなに立体起動が上手なんだい?」
こちらからハンジの顔を見る事は出来ないが、その瞳は好奇心で輝いている事だろう。
顔をしかめるリヴァイだったが、ファーランが何やら耳打ちすると、ぶっきらぼうに口を開いた。
「練習したんだ、何度もな」
「誰からも教わらずに?私なんて最初は、ベルトでバランスとることさえ難しかったけど……何か上達するポイントとかあるのかな?」
「別に無い」
「うわっ、アッサリ言い切るね。小さなヒントでも良いんだけど……ほら、皆だって知りたがってるみたいだしさ、ねぇ、ねぇ、ねぇ!?」
ホールにいる兵士たちは皆、彼に注目している。それは、これまで『地下のゴロツキ』に向けられていた敵意や蔑みからのものでなく、巨人を葬った『兵士』への尊敬が込められているように思えた。
リヴァイの視線が周囲の兵士をとらえた時。
エマの目には彼の瞳が揺らいだように見えた。
「皆、君達の素晴らしい戦いを見て、やり方によっては人間だって巨人に負けないって勇気づけられたんだよ!だから君の技や戦術を、私達にも教えて欲しいんだ」
「……断る。俺は我流だ、人に教えるようなものじゃない」