第8章 現実
「それならしょうがないねぇ…とりあえず1人で行ってくるよ」
「申し訳ありません、ハンジさん」
「ハンジ。盛り上がってたら後から参加するよ」
意気揚々と去ってゆくハンジを見守りながら、事のあらましを見守っていた班員達と笑い合った。決して彼女をバカにしている訳ではない。皆、私とハンジの仲を知っている。
「ありがとね、実はあとちょっとだけ座ってたかったの」
「何言ってるんですか、質問があるのは本当ですよ」
いたずらっぽく笑う彼は、出発前に配布された資料を開いて差し出した。そこには不足の事態に陥った場合の対処法が、びっしりと書き込まれている。
明日、この班は初列中央を担当する。団長の1つ前、責任は重い。
「あー、これは……」
「君達が巨人を倒すところに決まってるじゃないか!思わず滾ったよ!!」
説明をしようとしたその瞬間、ハンジの声が広間に響き渡った。エマ達だけでなく、周囲の兵士全員の注目が注がれる。
視線の先には呆れ顔のリヴァイ・イザベル・ファーランの姿。ハンジは3人の表情を気にも留めず、ドカッと腰を下ろした。
「ハンジさん凄い……」
近くの誰かの声に『全く同感だ』とエマは思う。
残念な事に、私はハンジ程の度胸を自分は持ち合わせていない。だから彼女に憧れる面もあるし、その裏表のない性格が大好きだったりもする。