第8章 現実
巨大樹の森から出たエマ達は、その光景に目を見開いた。
宙を舞うイザベルとファーランの姿。
2人はまるで、振り子のように巨人の背後から前側に回り込むと、巨人の両足の筋肉を絶った。
ファーランの方は切込みが浅く、片足しか崩れなかったが態勢を崩すにはそれで十分。
巨人がその膝を地面に着いた時、リヴァイがうなじ目掛けてブレードを振るった。
「すげぇ……」
「エマさん…彼らは……」
班員が思わず声を漏らす。
エマとリヴァイ達の間を前進し続ける本隊の面々も、彼らを凝視していた。
皆、目の前で起こった数秒の出来事が信じられないでいた。
たった数ヶ月の訓練しか受けていない『地下のゴロツキ』が、ベテランの兵士であるかのような見事な連携をみせ、巨人を討伐したのだ。
「……負傷者が出ているわ。手当てと、彼らの馬の回収を!荷馬車はまだスペースが無い、馬に乗れそうな者はなるべく自力で乗るよう伝えて」
エマは班員と別れ、1人エルヴィンの元へ向かった。
彼の姿は今、リヴァイ達の横にある。
巨人に振り落とされたのか…
地面に横たわり、嗚咽を漏らす兵士の殆どが新兵だった。
彼らと、数分前まで機能していた人間の一部を横目で確認しながら、エマはその足を止める事もなく無言で歩き続ける。