第8章 現実
巨体は崩れ落ち、その身体からは蒸気が上がる。
「全員、周囲を警戒!他に目標が居ないか確認を!」
本隊へ1体侵入を許してしまった今、これ以上そうさせる訳にはいかない。
左右。そして森の奥からも、目標無しの声が次々に上がる。エマは班全員からの報告を確認すると、彼らより一足先に地上へ下り立った。
「団長、他の目標は確認できません」
「ご苦労だった、本隊と合流するぞ!」
次々と地上へ下り立つ班員達は皆、安堵の表情を浮かべていた。
馬を呼ぶ僅かな時間に言葉を掛けあう。
「エマさん、やりました!」
「本当、上手くいったね!次も頑張ろう!」
「しかし、森から出た1体が気になります」
「他の班が上手く倒してくれていると良いのですが……」
それは本当に僅かな時間の会話。本来ならば、もっと班員達を労ってやりたい所なのだが…彼らの言うことはごもっとも。エマ自身も気になって仕方がない。
「うん、早く合流しよう。またよろしくね!」
寄ってきた愛馬の頭を優しく撫でると、素早くその背に乗った。
平地での戦闘に手間取っているであろう、仲間の事を考えると、嫌でも手綱を握る手に力がはいってしまう。
「いくよ!」
エマ達は森の外へ向かい、駆けだした。