第7章 変化
「おい…お前。飯食ってなかったのか?」
「え?」
リヴァイの疑問にエマはドキッとした。
確かにその通りではあるが、伝えるつもりでは無かった。
「うん、あまりお腹空いてなかったから」
食べる時間が無かったと言えば、気を使うだろう。そう考慮して選んだ言葉なのだが、リヴァイの反応はイマイチ良くない。無言のままジッとこちらを見つめている。
無言で行われれる腹の探り合いが……辛い。
「じゃ、私は帰るね。お疲れ様」
2人に背を向け女子棟へ歩き出すと、背後から「お疲れ」とミケの声が返ってきた。しかし、それを特に気にするでもなく歩き続ける。
地下ではお互い素性こそ隠していたが、もっと素直に会話し打ち解けられた。
それが出来ないのは何故か。理由はいくつもあるが、最も大きいのは『互いを出し抜こう』としている事だろう。
……けれど、本音で話せる事だってある筈だ。
よくよく考えてみれば『晩御飯、本当は食べ損ねただけです』ってなんで言えないのか。
ちょっとぐらい気を使わせたって良い筈だ。
私は『彼らに理解がある』つもりでいただけで、本当に『仲間』として迎え入れる気があったのか?
ただの偽善者になってはいないか?
その結論に至った時、エマは慌てて振り返った。すると男子棟へ向かい、自分から遠のいてゆく2人の姿。
「リヴァイ!」