第7章 変化
しばらくして。男子棟、女子棟の間にある中庭へ差し掛かると、建物から漏れ出した灯りにより視界が大分開けた。
ふと、ミケへ視線をやると両腕を組み、眉を寄せている。
「どうしたの、考え事?」
「実に興味深い、不思議な香りだ」
「あぁ……リヴァイの事か」
そういえば、いつにも増して嗅いでいる時間が長かったし、最後に鼻で笑う事もなかった。
リヴァイが興味深い、不思議な存在。というミケに同調すると共に、執拗にスンスンされ続け、不快感を露わにしている彼にも同調。そして同情した。
「ミケがこうするのは、1回だけだからさ。根は優しくて良い奴だから許してあげ……」
「エマ-!!」
リヴァイとミケの間を取り繕うとした矢先、エマを呼ぶ女性の声が中庭に盛大に響いた。
「えらく遅かったじゃないか!どこ行ってたの!?」
「ハンジ……」
逆光でその姿は影になってしまっているが、女子棟の3階から大声で話しかけてくる人物は彼女で間違いない。
「エマの晩御飯、部屋に取ってあるから!早く上がっておいでー!」
ハンジは自分の言いたい事だけを叫ぶと、ピシャリと窓を閉めた。
途端に中庭は静寂を取り戻し、その静けさが今は就寝間際である事を思い起こさせる。