第7章 変化
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結局2人で倉庫を後にする頃には、消灯時間が目前に迫っていた。
手早く倉庫を施錠すると、2人はランプの灯りを頼りに兵舎へと歩き出す。
その道中、エマは申し訳なさそうにリヴァイへ声を掛けた。
「遅くなってごめんね」
本体の整備は思いの外早く済んだが、トリガーの調整に手間取ってしまった。
リヴァイは刃を逆手に持ち振るう。つまり、本来ならば人差し指と中指で行う操作を、小指と薬指でこなす事になる。
何度も調整を重ね、何とか順手・逆手のどちらであっても扱いやすいポイントを見つけた。
とは言え……明日以降の訓練で実際に扱ってみると、また違ってくるかもしれないが。
「世話になったのは俺だ。お前が謝る事はない」
「そうなんだけど。私も良いアドバイス出来なかったからさ」
「んなもん期待しちゃいねぇよ」
素気なく言い捨てたリヴァイの言葉を聞いて、瞬間的にエマの脳裏に浮かんだのは、とある男性の姿。
『リヴァイの言葉は辛辣だが、思いやりのある奴なんだ』
2日程前だったか……ファーランとすれ違い、その場の流れで談笑した時に言われた言葉だ。
どうも、リヴァイに「目障り」と言われた私を気にかけてくれていたらしい。
あの言葉は、私を気遣った言葉だと。辛辣な言葉の中には、彼なりの優しさがあるのだと。そう私に説明するファーランの言葉は熱の入ったもので。
リヴァイへ向けられている信頼の大きさを改めて感じた。