第7章 変化
「夜通し移動して、明日中には帰ってくるのか?」
「いや、帰って来るのは明後日の夕方だよ。予定ではね」
エマがそう伝えると、リヴァイは視線を自身の手元へ戻した。
「そうか……距離があるからな」
そう呟く彼の表情は、どこか陰を落としている。
「リヴァイも王都に帰りたい?」
『地下』は劣悪な環境だが、3人にとって『故郷』であることに変わりはない。
育った場所というのは、それがどこであっても懐かしい物だろう……
「……俺たちは地下へ戻るつもりは無い」
その言葉はとても力強く、彼の意志が明確に表れていた。
エマはその表情に、そしてその言葉に目を細めた。手元へ視線を向けたままのリヴァイには、その表情を見る事は出来ない。
「……あっ!この部品は新しい物に取り替えようか」
ふと、リヴァイの手元を覗き込んだエマは声を挙げた。席を立ち、目当ての部品を求めて棚を物色し始める。
「この程度の摩耗で部品を取り換えるのか?」
背中越しにリヴァイの声が飛んで来た。
彼の言いたい事はよく分かる。指摘した部品はまだ使用可能な範疇だ。
「そうだね、少し勿体無いのかもしれない」
エマは棚から目当ての物を取り出すと、リヴァイへ向き直りそれを手渡した。
「でもね。壁外で戦闘になれば、装置にも大きな衝撃が掛かる。故障のリスクを低くするには、常にベストな状態を保つしか無い」
「これが私のやり方なの」そう言ったエマは少し、切な気に笑った。