第6章 接触
リヴァイはこの場に居ないファーランを恨んだ。本来はアイツがこうして、エマに接触する予定だったのだ。
「……お前に技巧術を教えてもらいたい」
「え、私に?」
エマは意外だ。と言わんばかりに目を見開く。
リヴァイ達は壁外調査へ間に合わせる為、技巧術や駐屯兵団との合同演習といった項目は全て省略されている。
つまり、これを別で教えて欲しい。というのは不自然ではないはずだ。
「でも、私より同じ分隊の人に聞いた方が良いんじゃない?」
「イザベルが指名した。お前がアイツに『困った事があれば相談して』と言ったそうだな」
予想済みの返答に対し、用意しておいた言葉を流れるように口にする。
少し饒舌すぎたか?
元々、こういった事はファーランが適役だ
。奴なら愛想を振りまきながら、もっと上手くやるのだろう。
エマは少し考える素振りを見せた後、視線をこちらへと戻した。
「分かった。良いよ!今日はもう当番ないの?」
「……無い」
リヴァイは普段通り、必要最低限の言葉で返事を返す。
「そっか。じゃあ、夕食後に倉庫集合でどう?」
「あぁ。構わん」
そう返すとエマはクスクスと笑いだす。
その様子にリヴァイは不機嫌そうに眉を潜めた。
「……何が可笑しい」
「いや、なんでもない」
そう言いながらも、彼女は眉を垂れさせヘラヘラと笑っている。
自然とリヴァイの舌が鳴る。