第6章 接触
地上に……いや、調査兵団へ来てから今日で丁度1ヶ月。
午後の訓練を終え、練兵場の片隅に立つリヴァイは空を見上げていた。
清んだ青い空と、沈みかけた夕日が生み出す色彩が混ざり合い、見事なグラデーションを生み出している。
こうして合間に空を見上げては、刻々と表情を変えるそれを目に焼き付ける。意図して始めた行為では無いが、いつの間にか日課になっていた。
二度と同じ表情を見せることは無いそれが、リヴァイにはとても面白く感じられた。
「エマ!」
すぐ近くから聞こえたその声に、視線をそちらへ移した。栗色の長髪を1つに束ね、ゴーグルをかけた兵士が何やら騒がしくエマに話しかけている。
「でけぇ声だな」
リヴァイはボソッと呟いた。
近いと思った声は、想像していたよりも遠くから発せられていたのだ。
普段は各隊毎に行う訓練だが、今日は全体合同で行われた。各分隊の仕上がり、及び陣形の並びの確認の為だ。
視線の先に佇むエマとリヴァイの間を、汗を拭いながら多くの兵士が通り過ぎてゆく。
リヴァイも本来ならば、さっさと部屋に戻り着替えを済ませたい所。しかし、それが出来ない理由がある。
『エマと接触しよう』
ファーランの提案はもう1週間前の事。そして今日、それを実行しようという訳だ。
ふうっとため息をつくと、視線の先はそのまま。近くの丸太へ腰を下ろした。
エマと声のデカイ兵士は2人で何やら話し込んでいる様子だ。といっても、所々ケラケラと笑いながら。
彼女の笑顔を見て、リヴァイはエマと出会った日の事を思い出した。