第5章 想い
「あいつはエルヴィンの側近だ。注意しろ」
「はーい」という呑気な返事を返すイザベルに続いてファーランが声を上げた。
「でもエマにエルヴィンの予定を聞けたら、効率が良いかもな」
確かにそれも良い案だ。
しかしそれならば、悟られないように慎重に動かなければならない。
視線だけファーランへ向けると、彼は肩を竦めた。
「思いついただけだから、もう少しちゃんと考えとくよ」
「あぁ、頼む」
ここに来て3週間、目まぐるしく日々が過ぎてゆく。
立体起動、乗馬、座学、規律、当番。
起床、消灯の時間さえも決まっている。
情けない話だが、生活に慣れる事で精一杯だった。
リヴァイは厩舎の入り口に辿り着くと、口元を布で覆った。必要な道具を揃えるべく、用具置き場へと歩みを進める。
この作業も最初に比べると大分慣れた。
望んでいない自身の成長に、皮肉めいた笑みがこぼれる。
「おい、さっさと済ますぞ」
このクソみてぇな当番も、仕事も。
第5章 END