第5章 想い
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「……しっかし『目障り』は言い過ぎだったんじゃないか?」
厩舎へ向かう道すがら、ファーランが突然そんな事を言い出した。リヴァイが「あ゛?」と怪訝そうに反応すると、イザベルも横から会話に入ってくる。
「そうだぞアニキ!笑ってたけど、ちょっと悲しそうだったぞ」
その言葉に先程のエマを思い出す。
「頑張って」と言う彼女は笑顔だったが、確かに少し悲し気だった。
……しかし問題は無いはずだ。
ここの連中と上手くやっていくつもりは更々無い。
「心配なら素直にそう言えば良いだろ。『そんな薄着で髪まで濡れてたら風邪引くぞ』ってな」
なんでもお見通し。だと得意気なファーランを睨むが、全く気にする素振りは見せない。
「おいイザベル、あいつと何を話していた?」
まさか余計な事など喋っていないな?と確認の為にも、少し強い口調で問いかけた。
「愚痴を聞いてもらってたんだ。食事、洗濯、掃除、馬。毎日毎日、何かの当番が回ってきてスゲー大変だって!」
問題ないだろ?と言いたげなイザベルを一瞥すると、リヴァイは前を向いた。確かにここまで『当番』があるとは思っていなかった。
新兵に多く割り振られるのは致し方が無いのかもしれないが、そのお陰で本来の『仕事』が進んでいないのは事実だ。