第5章 想い
正直、この質問にはエマも困った。
女の子が好きそうな可愛い雑貨や洋服か、はたまた娯楽の類か。とっさに頭に浮かんだそのどちらも、彼女の求めている答えでは無い気がした。
『私の住んでいる部屋の窓から、とっても綺麗な木が見えるんだ。イザベルが気に入るか分からないけれど…私は大好きだから、是非見てもらいたいな』
そう話すと彼女の瞳は興味深げに揺れ、
地上に出たら絶対見に行くと張り切っていた。
「あの木だよ。幹が少し曲がってて他の木と違うでしょ?」
エマは演習場へと続く道と中庭の境を指差した。
そこには少し歪な形の木が1本、枝先に葉を茂らせ佇んでいる。
「あんま綺麗じゃねぇな」
あからさまにがっかりするイザベルを見て、思わず声を上げて笑ってしまった。
「綺麗なのはね。春先の短い期間だけなの。淡いピンク色の花が沢山咲くんだよ。私が王都に行く前は満開だったんだけど」