第5章 想い
エマはタオルを手に取ると、静かに部屋を出た。
人気の無い廊下は静かで、冷たい空気がやけに気持ち良く感じた。
昨日は疲れていた事もあって、やたらと良く眠れた。
髪はボサボサだが、頭は既に冴えている。
階段をリズムよく降りると、1階のシャワー室へ入った。
髪を流したいだけのエマは脱衣所を素通りすると、シャワーの前に立ち、シャツとズボンの裾を捲った。衣服が濡れないよう、慎重にシャワーへ頭を突っ込む。
寝癖を直すだけなら濡らすだけで十分だが、折角だから……と備え付けの石鹸を手に取った。
泡立てる為、手を上下に動かすと、勢い余ってシャツに泡の塊が飛ぶ。
服を脱がない辺り自分でも横着だと感じているが、改めるつもりはこれっぽっちも無い。
頭をシャワーで流し終えると、シャツの泡を指先で拭った。
横に置いておいたタオルを手に取ればもう終わり。髪を拭きながらシャワー室を後にした。