第4章 再会
エルヴィンは睨み付ける男を一瞥すると、部下の肩から手を離した。
解放されたエマは、遠慮がちにリヴァイへ視線を送るが、こちらを見てくれる気配は……無い。
ふと、エマは彼の顔が汚れている事に気づいた。
ポケットからハンカチを取り出し、手枷をしている彼の代わりに顔を拭おうと手を伸ばす。
「リヴァイ、顔が汚れて…」
しかしその先から、それを制するように鋭い視線が向けられた。
その迫力に、宙に浮いた手がビクッと止まる。
「触るな」
その声は、今朝聞いた優しい物とは全くの別物だった。冷え切ったリヴァイの言葉と行動にエマの表情が曇る。
覚悟はしていたが……こうも見事に拒絶されると流石にショックだ。
そんな2人の様子を、イザベルとファーランは眉を顰め見つめていた。
「……ではミケ、後は頼んだよ。エマは私について来なさい」
エルヴィンの声に、その場の全員が動き出す。
エマは後ろ髪を引かれる思いで、その場を後にした。
「縁とは不思議なものだね」
廊下を歩きながら、エルヴィンがそう呟いた。
「本当、でもありがとう。エルヴィンが紹介してくれて助かった。何故か私達の距離が近い気がしたけど」
そう言って隣を見上げれば、エルヴィンは少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「立場を明白にする必要があったからね。それは彼らは勿論、君も…だ」
恩人とはいえ、必要以上に接触するな。
特に任務には支障を出すな、という事だろう。
しかしその心配には及ばない。
「私の居場所は決まっている。それは貴方が一番理解しているでしょう?」
そう、これしきの事で変わることなど何もない。
今までも、これからも。
最後のその時までずっと
4章 END