第3章 報告
摘発出来ない主な理由は、
商人は地下に『物資を提供する』という重要な役割があるかららしい。確かに、商人を摘発し物資の供給が止まれば……恐ろしい事になる。
「仮に。憲兵が商人の代わりをしたとしても、本来の仕事じゃねぇから長くは出来ん。そうなると、仕事の権利を得ようと貴族や議員が動き出すんだ。これがまたややこしくてなぁ……」
ため息と共に言葉を止めたナイルに、エマは申し訳なさそうに口を開く。
「1つの問題に別の問題が絡んでる。ってことだよね」
地下の住民を守るため、あえて片目をつぶっているのだ。それは彼らにとって、悔しい事だろう。
「ごめんなさい。何も知らず軽々しく口を挟んでしまって」
エマは無知な自分を疎ましく思った。
しゅんと縮こまるエマを見て、ナイルは優しげな笑みを浮かべた。
「何言ってんだ、謝るのはむしろこっちだぞ。分かってて放置してんだからな。それに俺はエマがそうやって疑問を持ってくれて嬉しい」
「……なんで嬉しいの?」
エマの言葉に、ナイルは首をかしげる。
「だって、普通なら嫌じゃない?何も知らない癖に!って思うんじゃないかな」
これは調査兵団に入ってエマが度々思う事だ。何も知らない人に、色々言われるのは辛い。