第3章 報告
「お疲れエマ、改めてありがとな。急に駆り出す事になっちまって申し訳ない」
ナイルが自身の片付けを終え、エマの元へとやってきた。
「全然!むしろ嬉しいよ。エルヴィンもこっちならって許可くれたし、精一杯頑張ります」
朝、エマから報告を受けたナイルの行動は早かった。昼にはこの緊急会議が開かれ、午後にはエマを襲った集団の摘発を行うと決まった。
「それにしても、これだけ情報があったんだね。正直今日って聞いて、急すぎると思ったけど。驚いちゃった」
資料には潜伏先から、集団の人数まで。かなり詳しい情報が載っている。
「元々最終段階まで来てたんだ。お前のお陰で、奴等の中に怪我人が出てるみたいだしな。それに…夕方調査兵団が飛び回って、奴らに身を隠されても困る。踏み込むならそれより前だ」
調査兵団の地下潜入が「今日」という事にも理由がある。
地下商人の裏取引が行われるからだ。立体起動を操る集団は、この取引を狙ってくるだろう。と見込んでの事だった。
「裏取引してる商人は摘発しなくていいの?」
裏取引の情報をくれたのは憲兵団だ。
エマの純粋な疑問に、ナイルとヴァルツは顔を見合わせ、バツの悪そうな顔をした。
「地下商人には憲兵も迂闊に手を出せないんです」
ヴァルツの言葉に何故?と聞き返せば、ナイルがその理由を説明し始めた。