第3章 報告
「見直したか?」
「んー、ちょっとはね」
エマの返答にナイルは満足気だ。
「しかし。憲兵としては悔しいが、お前を助けた男の言うことも見方を変えれば正論だ。どんな奴だったんだ?」
ナイルの言葉にリヴァイを思い出す。
どんな人かと聞かれると、説明が難しかった。
「えっと、優しくて誠実で…かっこ良い人だったよ」
エマは照れたように俯き答えた。
その様子を見て2人は驚く。
「そんな顔をするとは妬けるじゃないか。その男に惚れたか?」
確かに素敵な人だが、一度会っただけの人を好きになるなんて、そんな事は絶対無い。エルヴィンに反論しようと口を開くが、それより先にナイルが声をあげた。
「エマ!そいつは駄目だ。いいか?お前のその感情は吊り橋効果という奴だ。俺が若くて素敵な憲兵を紹介してやるから、それまで待つんだ。良いな‼」
「……そんな事しなくて良いから、早く会議の準備しなよ」
勢いに押され、それしか言えなかった。
この後の憲兵団会議にはエマも参加する。思い出した様に準備を始めるナイルを見ながら、お菓子を一つ頬張った。
「なに?」
不愉快そうに睨むも、エルヴィンはもぐもぐと口を動かすエマを見て笑っている。
「何でもない、頑張ってくるんだよ」
彼とは夜まで別行動だ。
「ナイルの事は任せて」と答えれば、遠くから「それはこっちのセリフだ」と鋭いツッコミが返ってきた。
「……エマ、ナイルは任せた」
このエルヴィンの返答に、思わず笑みがこぼれた。