第3章 報告
「少人数であれば、直ぐにでも地上へ出して働き口を斡旋してやれる。でも地下の奴等全員は無理だ。個人でそういった活動をするならともかく、兵団としてやるなら平等でないと。暴動が起こる可能性だってある」
ナイルの言っている事は正論だ。自分でも今まで何も知らなかった人間が、調子の良い事を言っていると思う。
しかし、現実をこの目で見てしまった。どうにかしたいという気持ちは抑えられない。
「エマ、こういう問題はタイミングが大事なんだよ」
エルヴィンがエマを覗き込み諭すように言った。
「タイミング?」
エマはエルヴィンの言葉を聞き返す。
「そうだ。このままではいけない、と感じているのは君だけじゃない。我々がすべきなのは、小さな積み重ねなんだよ」
「エルヴィンの言う通りだ。大きな変化は、望む者が居れば必ず来る。俺達はその時が来るまで、自身に出来ることをするまでだ」
2人の言葉の真意を、どの程度理解できただろうか。自信は無いが……
「……なんか。2人共やっぱり大人だね」
エマは少し悔しそうに笑った。
ムキになっていた自分が恥ずかしい。
2人はとうに、この問題に向き合っていたのだ。