第3章 報告
【憲兵団本部】
ナイルの私室でエマはソファに腰掛け、机の上に並べられたお菓子を見下ろしていた。
隣にはエルヴィンが笑みを携え、同じ様に腰を下ろしている。
「ナイル。いつもいつも、お菓子を用意しなくて良いんだよ?」
エマは眉をひそめ部屋の主へ視線を向けた。初めて会った時からずっと、ナイルはこうしてお菓子を用意してくれる。今日はその量が随分多い気がするのだが……
「ナイルはエマに甘いな。だが、エマはお前にはやらんぞ」
エルヴィンがまたナイルを茶化して遊び始めた。
「分かってるよ!俺が好きでやってんだ。文句ねぇだろ」
「そうだな、エマも変態の部下にはなりたくないだろう」
その言葉にナイルは不快感を露わにしている。朝、エマが叫んだ声は、丁度部屋を出て来たエルヴィンとミケにも届いたらしい。
あの言葉は2人に対しても言っているのだが、その真意は伝わっていないようだ。
「しっかし、子供を使って連れ込んでたのか。そりゃ警戒心も緩むよなぁ。子供になんて事させてんだ」
ナイルの言葉に昨日の自分を思い出した。全く同じ事を言っていた。
「私もね、子供使うなんて許せないって思ってた。でも、私を拾ってくれた人はそれを少し違うと言った」
2人がエマへ、興味深気に視線を向ける。
「犯罪が生まれるのは、そうしないと生きていけない人がいるから。地下では子供も知恵を付けないと生きていけない。奴等は力の無い子供に、生きていく術を教えているんだ。って」
エマは一呼吸置くと、言葉を続ける。
「ねぇナイル。地下も普通の生活が出来るようにはならないのかな?」
その言葉にナイルは腕組みをし、椅子に深く腰掛けた。
「あのな、それは俺らにとっても大きな課題なんだ」
ナイルは静かに続ける。