第1章 プロローグ
昨晩は、確かに疲弊しきった顔をしていたのだが…
女というものは街を散策するだけで、こうも元気になるものなのだろうか?
ミケの頭にそんな疑問が生まれた。
「..夕方には帰って来るんだぞ。作戦会議には遅れるな。」
彼の言う様に、夕食前には地下街潜入の作戦会議が控えている。
「また後で」と互いに言葉を交わし、エマは通りを歩きだした。
(もうあまり時間は無いし、優先順位を決めて回らないと…)
キョロキョロと辺りを見回しながら歩いていると、突然ドンッと何かにぶつかってしまった。
「わっ!ごめんなさいッ!!」
慌てて前方を見ると、小さな男の子が尻もちをついて倒れていた。
彼が抱えていたであろう袋が地面に落ち、中身が散乱している。
「本当にごめんなさい。怪我はない?」
しゃがんで男の子の顔を除きこむが、うつ向いたままで表情を読み取ることは出来ない。
「痛い所はある?あ、荷物拾わせてね。」
辺りに散らばった物をかき集めると、男の子はようやく立ち上がり始めた。
「立てて良かった。はい、これ持てるかな?」