第1章 プロローグ
私たちは分隊長であるエルヴィンの命により、王都にてロヴォフの動きを探っていた。
必要最小限の休息のみで過ごしたこの期間は実際よりも長く感じられ、壁内でこんなにも疲労を感じたのは久しぶりだ。
しかしその甲斐あって、疲労に見合うだけの収穫はあった。
昨晩、『地下街のゴロツキ』を勧誘しに来た、エルヴィンを含めた3名と合流。
報告を終え、その任務は無事に終了となった。
「それより…乙女の容姿を指摘するなら『可愛い』とか『似合ってる』って言葉をスマートに使わないと。ミケ、モテないよ。」
「巨人3体相手にしても、涼しい顔して倒す乙女の意見は貴重だな。…参考にさせてもらおう。」
おそらく、前回の壁外調査の事を言っているのだろう。彼は少し意地悪そうに、フンっと鼻で笑った。
「ちょっと!見てたんなら加勢してよ!あの3体は小さい奴と、動きが遅いのだったからなんとかなったけど…って…」
(この通り…気になるかも。)
これまで歩いてきた大通りと交差するように、その通りはあった。お洒落な雑貨屋。家具や時計、文具などの専門店が立ち並んでいる。
「ミケ。私はもうちょっと寄り道してから、宿舎に戻るよ。」
ここに来るまでの間、既に何軒か付き合ってもらっている。
ミケだってこれまで働き詰めだったのだ。
これ以上付き合わせるのは流石に悪い。
「それは構わんが…1人で大丈夫か?」
「平気平気!宿舎まであとちょっとだし、初めての街とはいえ迷う距離じゃないよ。」
そう話すエマの表情は、生き生きとしている。