第3章 報告
「ミケが言うのなら確かだな。しかし、良い人に拾ってもらったじゃないか。エマが世話になったのだから、私も礼をしなくては」
エルヴィンはケラケラと笑い楽しそうだ。
完全に2人にからかわれている。
「~~~ッ着替えてくる!!」
バタンッと少し乱暴にドアを閉め、エルヴィンの部屋を後にする。
中から2人の談笑する声が聞こえてくるが、もう気にしない。
廊下に出れば、ユニコーンのエンブレムがそこら中に見て取れた。
ここは憲兵団の宿舎だ。王都に調査兵団の宿舎があるはずもなく、こちらに部屋を借りている。今の時間は任務へ向けて出発する頃だろう。人通りは多い。
歩き始めれば、すれ違う憲兵が物珍しそうにこちらを見てくる。
エマの顔はエルヴィンやミケ程、知られてはいない。調査兵団とはまた違う雰囲気に圧倒され、なんだか落ち着かない。
「おい!エマじゃないか!」
ふと、背後から声を掛けられた。
そちらへ目を向けると、朝食の並んだプレートを手にナイルが立っている。
「おはようナイル!あらー、出世頭は大変だね」
食事を持っている。という事は、部屋で朝食を取るのだろう。
ナイルが期待されている存在。という事は有名な話だ。
「年寄り臭いこと言うな!それに、これはお前のだ。帰ってきたと報告を受けてな」
そう言ってエマへプレートを手渡した。突然の嬉しい気遣いに目が輝いた。
「嬉しい!ありがとう。忙しいのに気が利くじゃん!」
ナイルとはエルヴィンを通して何度も交流がある。憲兵で気心知れているのは彼と同期ぐらいだろうか。