第3章 報告
その時、コンコンッとドアをノックする音が響いた。なんて良いタイミングだろう。
誰でも良いから、まだまだ質問を続けてきそうなこの上官を止めて欲しい。
エルヴィンがドアの外へ声を掛けると、大きな男が頭を屈め部屋に入ってきた。
「ミケ!この後会いに行こうと思っていたの!」
エマの姿を確認したミケは驚いていたが、直ぐに安堵した表情へと変わった。
彼はドアの前から部屋の中央へと歩みを進める。
「無事だったか。あの後、行方知れずで心配したぞ。どこに居た?」
ミケはエマの額の包帯に手を伸ばした。壁外でもないのに何故?と顔に書いてある。
「私の不注意で地下に連れ込まれてしまって…逃げた所を親切な人に拾ってもらったの。1晩泊めてくれて、今日の朝は憲兵の所まで送ってくれたんだよ」
エマの話に信じられない。といった表情を浮かべるミケ。すると、何かに気付いたのかエマの胸元をじーっと見ている。
「エマ。そのシャツはお前の言う、親切な人の物か?」
「え、そうだけど」
エマの返答に、ミケの動きがピタリと止まる。まさか、まさかとは思うが……
「その男に昨晩、求められたりはしていないだろうな?」
背後でエルヴィンの吹き出す声が聞こえた。
「だからっ、そんな事は一切無かったから!家には女の子もいて、夜はその子と一緒に寝たの!」
一気に捲し立てるエマをよそに、ミケはエマの首もとに顔を寄せスンスンと鼻を動かした。
「……確かに事後の香りはしないようだ」
ミケは腕組みをしながら真顔で言い放つ。
デリカシーも何もあったもんじゃない。