第3章 報告
「ということがありまして…」
エマはモゴモゴと言い淀んでいた。
目の前には自身の上官、エルヴィンが書類を片手に蒼い瞳をこちらへ向けている。
「申し訳ありませんでした」
エマは深々と頭を下げた。
会議の無断欠席に無断外泊。
兵団に入団してから色々な事があったが、この様な失態は初めてだ。
「エマ、顔を上げなさい」
その言葉に視線を戻すと、エルヴィンは一つため息をつき言葉を続ける。
「事情は分かった。ミケも酷く心配していたんだよ」
エルヴィンは手にしていた書類をそっと机に置くと、エマへ向きなおした。
「我々は本日夕刻、地下へ入る。エマは地上で待機だ。」
「っそんな!私も行けます!」
エルヴィンの言葉にエマは焦る。
地下潜入に関わっているのは彼の腹心であるごく少数だ。その前段階であるロヴォフ調査に至ってはエマとミケの2名のみで行った。
途中で投げ出したくはない。
「ダメだ、相手もさほど抵抗して来ないだろう。これはお前達が掴んだ情報だ。それに会議に出席していない者を作戦に入れることは出来ない」
厳しく制す言葉にエマはグッと口を噤んだ。
その様子を見たエルヴィンは言葉を続ける。
「まずは着替えて、医務室で傷の手当てをしてもらってきなさい。それから君の捜索依頼の事後処理だ、ナイルが直々に話を聞きたいそうだよ」
「……了解しました」
ミケが憲兵団へ捜索依頼をかけていたと知ったのは、地下から出る時だ。おかげで話がスムーズに通り、地上へ出る事が出来た。
勿論、この部屋を出たら一番に会いに行くと決めている。