第1章 プロローグ
王都ミットラス
きらびやかな建物が並ぶ街並みは美しく、エマは普段とは違う景色に自然と気分が高まるのを感じていた。
少し遅い昼食を済ませ、私達は散策しながら宿舎を目指している。
「しかし、私服のエマは兵士に見えんな」
横を歩くミケが唐突にそんなことを言うものだから、私は目を丸くした。
彼とは同じ分隊に属する戦友だ。
確かに普段は兵服だが、私服を見るのは今回が初めて。
という訳ではない。
「何を今更。ちなみにそれって褒めてるの?」
私を観察しているのであろう、右上からしつこい視線を感じる。
眉を寄せ視線をそちらへ向けると、少し長めの前髪から優しげな目元が見えた。
彼は、持ち前の長身と体格の良さから、一見すると怖そうに見える。
しかし、内面は大らかで滅多に怒ることはないし、冗談だって言う。
まぁ..少し言葉足らずな所はあるが、とにかく良い奴だ。
「そうなんだが…髪型のせいか?」
そういうことか。とエマは納得した。
出かける前、いそいそと髪を編み結い上げると、いつも以上に上手くいったのだ。
しかし…女性の容姿を指摘するのであれば、
喜ぶ言葉の一つでも添えれば良いのに。
「だって、ようやくもらえた自由時間だし。なにより私は初めての王都だよ?気合い入っちゃっうよね!」
「なるほど。」
ミケの返事は短い。しかし、穏やかで落ち着いた声色が、適当に返事をしているのではない。と教えてくれている。