第2章 出会い
一方、エマは完全に戸惑っていた。
台所に立つリヴァイの背中を見ながら、今日1日の出来事を思い返す。
昨日は仕事で寝るのが遅く、起きたのは昼前だった。そこから遅めの昼食に出かけて、帰りに買い物して……
そこまで思い返し、深いため息をついた。いつも通りの1日だった。いや、そうなるはずだった。悶々と思い悩んでいると、リヴァイが両手にカップを持ちこちらへ戻ってきた。
「飲め」
ずいっと目の前に差し出されたマグカップからは、ほのかに湯気が立っている。「ありがとう」と手に取ると、彼は机を挟んで反対側に腰を下ろした。
「美味しい」
一口飲めば、口の中に紅茶の程よい苦みと甘味が広がった。これまで紅茶を飲んだ経験は殆ど無い。こんなにも美味しいものだったのかと、素直に驚いた。
「そりゃ良かった」
リヴァイは相変わらず無表情でぶっきらぼう。だが、少しばかり場の雰囲気が和んだように感じた。
……今ならば、少し会話が出来るかもしれない。