第10章 出発
以前も教えてくれた『搾取する側・される側』
地下で生き延びるためには、後者になる事を避けなければならない。それには
綺麗な身なりでいる事。
そして周りを清潔に保つ事が何よりも大切らしい。
「破れていない、汚れていない服を着る。そんな事で一目置かれ、くだらないトラブルに巻き込まれにくくなる」
淡々と、本を拭く手を止める事なくリヴァイは続ける。
「そして、掃除をする事で病気になるリスクを減らす事が出来る。地下で死ぬ奴は大抵殺されるか、病気でダメになるかどっちかだ」
ふと、地下の情景が頭に浮かんだ。
道端にはゴミが捨てられたままで、虫がたかっている遺体も転がっていた。
「地上に住んでる奴らと同じ……当たり前の生活を送るだけで、それなりに身を守れたんだ」
「……なるほど」
皺のないシャツに、真っ白なクラバット。
ブーツにだって汚れは付いていない。
そんな彼の身なりは、地上で生まれ育った大多数の者より美しいと思う。
もちろん、元々の性格もあるのだろうが……
そんな理由もあったのだと。
また一つ、彼を知る事が出来た。
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