第10章 出発
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「……かなり綺麗になりましね。リヴァイさん」
「なんだ?喋り方おかしいぞ」
マットを干した後、まず手を付けたのは私室。照明を拭いて、掃き掃除と拭き掃除を手早く済ませた。
そして、次に取り掛かったのは執務室の本棚。
並べられた本を全て取り出し、棚の上はリヴァイに肩車される形で雑巾がけをした。
大人になって肩車なんて……と彼の提案にあまり乗り気ではなかったのだが、いざやってみると楽しくてしかたがなかった。
『怖いッ!グラグラする!リヴァイもっとちゃんと支えてよ!!』
『うるせぇな……さっさと拭け』
雑巾片手に騒ぐ。
こんな経験は随分と久しい。
床に山積みにされた本を拭きながら、エマは彼に視線を向けた。
頭に三角巾を巻いて、口元も布で覆っている姿は意外にも愛らしい。
業務中に不謹慎だとは分かっているが『可愛いな』なんて思ってしまう。
……彼は年上なのだけれど。
「本当に掃除が上手だね。そういえば地下の家も綺麗だったよね」
「……地下では大事な事だ。命を守ることにも繋がる」
「どういう事?」
リヴァイは口元の布を下げ、地下での生活をゆっくりと話してくれた。