第10章 出発
「え?だって今から荷物入れれば、すぐ終わるじゃん」
「バカ言え。お前、この埃が見えねぇのか?」
リヴァイは本棚の縁を人差し指でなぞった。
確かにその指先は汚れているが……正直、そこまで気になるレベルではない。
「おいミケ、この本は持って行くのか?」
「その本は置いて行く、元々この部屋にあったものだからな」
その言葉にリヴァイは本に手を掛け、立派な革表紙の本を1冊抜き取った。途端に舞う埃が、彼の顔の周りを漂う。
「……なんってザマだ」
「その棚の物は、俺がこの部屋に来てから一度も触っていない」
あっけらかんと言い放ったミケの言葉を聞き、リヴァイは手に取った本をそっと棚に戻した。
「おい、行くぞ」
「え……行くってどこに??」
事のあらましを見守っていたエマに、声がかけられた。
「掃除用具を取りに行くに決まってんだろ。早急に取り掛かる」
……そういえばイザベルが言っていた気がする
リヴァイは綺麗好きだって。