第10章 出発
「……という訳で、ここが私の部屋になる予定なの」
エルヴィンの部屋を後にし、その隣の部屋の前にリヴァイを連れて来た。同じ班になるのであれば、ここに来てもらう事も多くなるだろう。
「この休み中に部屋を変えるのか?」
「そうだね、皆が休んでる間にやることになる。って言ってもミケ次第だけど……」
毎回。壁外調査の後片付けが終われば、一般の調査兵にはまとまった休みが与えられる。
その間に役付きの人間は、死亡通知書を届けたり。報告書を作成したり。班の再構成などを考えたりする。
休み明けに向け、準備に勤しむのだ。
「ミケー?移動進んでる??」
興味本位で部屋をノックしてみると、中から低い声がした。一旦リヴァイと顔を見合わせてから、扉を開けてみる。
「あれ?意外と順調そうだね」
部屋の荷物は既に運び出されており、壁に沿って配置されてている本棚は半分程空いている。
「エマか、あと机の中を整理すれば終わるぞ」
「凄いじゃん。どうしたの?」
「ナナバが手伝ってくれてな。今は新しい部屋の整理をしている」
成程。しっかり者の彼女が手伝っているのなら、このハイペースも納得だ。
「じゃあ、私ももう荷物持って来ようかな」
「おい、ちょっと待て。この状況で荷物を入れるのか?」
背後からリヴァイに声を掛けられた。後ろを振り向けば、彼は眉間に皺をよせ不機嫌そうに立っている。