第10章 出発
「……という事でエマの班に入ってもらうよ、リヴァイ」
エマとエルヴィンが話を終えた後、執務室を訪れたリヴァイに班の移動が伝えられた。
正直、私などの下に付く事に納得してくれるだろうか?と不安ではあったが、彼はあっさり「分かった」とだけ返事をした。
「よろしくね、リヴァイ」
エマは右手を差し出し、握手を求めた。
これからは単なる『仲良し』ではいられない。命を預け合う間柄になるのだ。
リヴァイはじっと宙に浮いた掌を見つめると、やがて自身のそれを重ねた。
「ああ、よろしく頼む」
「ちなみに、私の班は基本的に前衛です。どこが危険かなんて一概に言えないけど……他の班に比べると巨人との遭遇率は高い。それは覚悟してもらえるかな?」
「問題ない」
リヴァイはエマの手をしっかりと握り返し、そう告げた。
相変わらず端的で素っ気ない言葉。少し前ならば彼の心が読めず緊張した物だが、今となっては特に気にならない。
彼が入団してから、微妙な関係が続いていた。
だが、あの日々は無駄ではなかったと。
心からそう思う。