第10章 出発
「君も本当は知りたいのだろう?上に立つ者に何が見えるのか」
その言葉は驚く程、的を得ていた。
「……さすが。私を乗せるのが上手いね」
「やってくれるかい?」
「やってやろうじゃないの。でも、批判は覚悟しといてよ?」
「そんな些細な事は気にしないよ。女性の君にはキツイかもしれないが」
「私を女だと思ってたのね。それはありがたいわぁ」
ジト目、棒読みで返せば、エルヴィンは楽しそうに笑って見せた。
「君は優秀だ。副官を務めてもらえて心強いよ」
「分かった分かった。話はそれだけ?終わりなら、部屋の移動の事とかミケと話してくるけど……」
役付きは相部屋ではなく個室だ。ミケがフラゴンの部屋に移動して、空いた部屋にエマが入る事になる。
「あぁ、それともう一つ……」
エルヴィンは『もう一つ』を淡々と口にした。
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