第56章 作戦会議
暴走族も極道も揉め事がなく、皆がこうやって笑っていられたらいいのにな。
クスクスと笑いながらあたしは思った。
本当なら、こんな揉め事に巻き込まれずに普通の恋を楽しみたい。
恋愛小説や漫画であるような、キュンッと胸をときめかせる乙女の気持ちになりたい。
でも、今の生活や恋の仕方に違和感や不満があるわけでもない。
彼といて楽しいし、色んな人達と出会えて色んな事を経験して前よりも大きくなれたようなそんな気がする。
心がね。
でも、やっぱり傷付いた彼を見るのは胸が痛む。
"たいしたことねぇ"
そう言って彼は笑っているけど、はたしてそれは本心?
ただあたしに気を使っているのではないの?
そんなことを時々考えてしまう。
確かに彼は強いけど、はたして心まで強いとは限らない。
本当は―――。
「苦しそうに笑うんだね。」
笑顔を張り付けてるあたしの顔を見て、藤崎先輩が言った。
「え…?」
あたしは不思議そうに彼を見た。
「本当は何考えてるの?何か言いたいこと…あるんじゃない?」
優しく笑みを浮かべながら先輩がジッと見ている。
今の言葉どこかで…
"先輩、本当は何か言いたいことがあるんじゃないですか?"
夏の花火大会の時だ。
彼が刺されたって聞いて、病院行って、病室で先輩と話したんだった。
その時、あたしが言った言葉だ。
ズクン―――
胸が苦しくなる。
今度はあたしの番だ。
"皆を信じて待つことが今のあたしに出来る事"
そう決めて前を進もうとしてたのに、何故胸が苦しくなるの?
本当はこの争いを心の中で否定している自分がいるんじゃないの?
自分自身に問う。
自問自答だ。
分からない。
だけど、やっぱり彼には傷付いてほしくない。
でも、何かを守るためには犠牲を伴うのは仕方ないよね。
なにもせずに何かを得ようとするのは都合がよすぎではないか。
あーなんだか頭がこんがらがってきた。
頑張れあたし。
彼を信じるんだ。
疑うよりも信じて待つ方が、
ずっとずっと
楽しいよ。