第56章 作戦会議
ピンポン―――
"63階デス。"
エレベーターが止まると共に、機械的に作られた声のアナウンスが聞こえてくる。
その直後、ドアが自動的に開いた。
「行くぞ。」
宗次郎はそう言うと、エレベーターを降りた。
後の二人も続いて降りた。
そして、エレベーターから然程距離の無い場所にあるミラーガラスの大きな自動ドアの前に来た。
ドアに"detective agency(探偵社)神影"と書いてある。
しかし、そのドアは前に来ただけでは開かない仕様になっていた。宗次郎は驚きもせず、側にあるインターホンを押した。
「どちら様ですか?」
インターホンから若い女の声が聞こえてきた。
「岩中だ。藤堂に用があってきた。」
「まぁ、宗次郎さんですか!?すぐ開けまーす。」
宗次郎がインターホンに向かって言うと、女が騒ぎ始めた。
そして、ドアがゆっくりと開く。
「宗次郎さん会いたかったー。」
そう言って出てきたのは初老ぐらいの女だった。
「なんや、ババアかい。」
溜め息を吐きながら善司が呟いた。
内心、若い女を期待していたらしい。
「誰がババアやッ!!」
女に聞こえていたらしく、凄い形相で叫んでいる。
まるで般若だ。
「オッサン。あんたも言える顔かよ、鼻傷。」
善司の隣にいる誠也がボソリと呟いた。
「誰がオッサンじゃッ!!」
隣を見て、善司が叫ぶ。
「自分の顔見たことあっか?五十近くのオッサン顔だぞ。」
「なら、おどれの顔は七十のヨボヨボジジイや。」
「はぁ!?どこが!?」
「全体がジャ!!その身体も顔もヨボヨボなんジャ!!腹筋マジックで書いとるだけやろ!!」
善司が誠也の腹を指差す。
「ざけんな!!天然物に決まってンだろ!!」
「どこがやねん!!ワシの腹筋の方が天然物や見て――」
「やかましいッ!!ワイの事務所の前で喧嘩するなッ!!」
善司が腹筋を見せようと服を捲った瞬間、怒鳴り声が響いた。
声の方に目を向けると、小さな子供が立っていた。
まるで小学生のような幼い風貌だ。
善司と誠也は間抜けな顔をした。