第55章 男達の闘い
そして、蹴飛ばし仰向けにさせ、馬乗りになり顔を何度も殴る。
バコッ―――
バキィ―――
ドガッ―――
どんどん腫れていく顔。
眼鏡はとっくに割れてしまっている。
というより、踵落としの時点で、林山は脳震盪を起こし気絶していた。
その事に気づかない先輩は、今もまだ殴り続けている。
今更ながら先輩は少し卑怯だ。
「だから、俺は喧嘩向きじゃねぇんだよ。」
一人で呟く。
「おーい、気絶してんぞ。」
鼻から出る血を拭いながら大川先輩が言った。
「マジか。」
竹井先輩は手を止め林山から降りる。
「生きてっか?」
口元に手をかざせば僅かに手に息が吹きかかる。
「よし、生きてる。」
それを確認すると、竹井先輩は立ち上がった。
「雨止むか?」
「通り雨だろ。」
「タイミング悪いな。」
不機嫌な空を見上げながら二人は呟いた。