第55章 男達の闘い
「まずい?族ごときにビビってんじゃねぇ。女が入れるような族だそ?カスに決まってんだろ。昔の威光を引きずってる…虎の威を借りるなんとかだ。あー、やっちまえッ!!」
「うッス。」
田沼の言葉に取り巻き達が歩き出した。
皆此方へ向かってくる。
「姉御下がって下さい!!」
「俺等の後ろにッ!!」
二人が必死にあたしを後ろに隠した。
「でも――」
「いいからッ!!」
ノブさんが叫ぶ。
「ガキが調子にのんじゃねぇッ!!」
キョウさんが殴りかかった。
「前田兄弟が武器ごとぎでビビるわけねーだろうがッ!!」
ノブさんも拳を上げた。
バキィ―――
ドガッ―――
さすが誠也君の族の人だ。
恐れられるだけのことはある。
次々と男達を殴り飛ばしていく。
それに、二人の息がピッタリだ。
気づけばもう田沼しかいなかった。
「やっぱ俺等兄弟最高ッ!!」
「おうよ兄弟!!」
血まみれの二人がまた手を握り合っている。
だから、気づいていない。
田沼が殴りかかろうとしていることを。
―――危ない!!
あたしはとっさに地面に転がる鉄パイプを拾い、田沼の頭目掛けて降りおろした。
バコッ―――
「カハッ―――」
背に差はあるが綺麗に後頭部に入った。
ドサァッ―――
田沼が地面に崩れ落ちる。
―――あたしだって……たまには役にたちたかった…。
震える手で鉄パイプを握っていた。
「姉御……。」
驚いたように二人があたしを見ている。
「仲間助けるのは当たり前だろぉッ。」
誠也君(かれ)の真似をするように鉄パイプを肩に置いてニコッと笑った。
「前田兄弟、姉御に感服しましたッ!!」
「マジいいッ!!」
二人が涙を流している。
大袈裟だ。
と思うけど、あることが気になる。
「兄弟?」
首を傾げる
「あ、気づきませんでした?俺等双子なんスよ。」
「ぇえッ!?」
思わず声を上げてしまう。
一人は眉毛がなく、もう一人はカラスマスクをつけているため全く気づかなかった。
確かに似てる。
目とか身長とか、それに雰囲気も一緒だ。