第55章 男達の闘い
目の前の光景に、思わず口を手で覆ってしまう。
藤崎先輩が白井に拳で弄ばれている。
先輩はまったく避けようとしない。
ただひたすらに腕で受け止めているだけだ。
「藤崎さん大丈夫ッスかね?」
眉毛の無い兵隊さんが心配そうに言った。
「藤崎さんが負けるわけねーだろ!!」
黒のカラスマスクで口を覆った兵隊さんが叫ぶ。
あたしは、今にも二人は喧嘩を始めてしまうんじゃないかと心配になった。
「そうだよな!!わりィ、キョウ。」
「おうよ、ノブ。俺等の副総長はつえーんだ!!」
でも、心配は無用のようだ。
二人は手を握り合っている。
やっぱり極使天馬(かれら)は仲間意識が強い。
ギュッとあたしは特攻服を握った。
カラカラカラ―――
すると後ろから地面を擦るような金属音が聞こえてきた。
「なんだテメェ等ァ!!」
ノブと呼ばれた眉なしの兵隊さんが叫ぶ。
振り向けば、バットや鉄パイプ、そして指サックを手につけたカラフルな頭の男たちがゾロゾロといた。
「俺等の後輩がやられたっつうから出てきただけっスよ。」
一番先頭にいる反り込みの入った坊主の強面の男がクチャクチャと何かを噛みながら言った。
ガムだ。
それにこの男、かなり背が高い。
「テメェ、見たことあるぞ。北善田(ぜんだ)中の田沼(たぬま)だろ?」
ジロリとカラスマスクのキョウと呼ばれた人が睨み付ける。
「いやぁ…俺のこと知ってるんスか?そりゃあ嬉しいや。北中で番張ってる三年の田沼ッス。以後お見知りおきを。」
田沼が軽く頭を下げた。
「んなもんどうでもいいからさっさと帰れよ。お前等が出るとこじゃねーんだよ。」
しっしっとノブんが田沼を追い払おうとした。
「なんスか?俺等が中坊だからなめてんスか?」
田沼のが上からあたし達を睨み付けている。
「あ?喧嘩売ってんのか?帰れっつてんだよ、これは俺等の問題なんだよ。」
キョウさんも下から田沼を睨み付けている。
「田沼さん不味いんじゃ…。」
田沼の取り巻きが耳打ちした。