第55章 男達の闘い
ザアァァアア―――
激しく降る雨の中、西村先輩が空を見上げた。
怪我だらけの顔の血を洗い流すように、雨粒を受け止める。
コイツは強い。
二回目でもそれは変わらない。
状況も劣勢。
勝てる見込みなんて微塵もない。
―――だけど、負けたくない。
何がそう思わせるのかは分からない。
わずかなプライドという名の自尊心が彼の闘争心を奮い立たせている。
ギュッと拳を握る。
―――コイツに勝って仲間の所に行くんだ。
そう決意を胸に走り出した。
ビチャビチャと音を立てながら革靴が水を弾いている。
濡れた髪が顔に張り付き視界を遮る。
それでも迷わず先輩は走った。
狙いはただ一つ。
「みなみぃぃいいッ!!」
ヘラヘラと笑う南に向かって拳を撃つ。
バシィッ―――
受け止められた。
片手で。
そんなことはわかっていた。
もう片方の拳を打ち込む。
バシィッ―――
それも受け止められた。
「クソッ―――」
ジリジリと滑る地面にを踏み込みながら、腕に力を入れる。
歯を食い縛り、こめかみには血管が浮き出ている。
相手もまた然(しか)り。
状況は五分になった。