第55章 男達の闘い
「…お前ホントにめんどくせぇ性格だな。」
鼻から出る血を拭いながら白井が笑った。
「…なんだと?」
「そんなの、ガキの考えだろ?二十歳になったら誰かを守るだの甘い考えなんかどうでもよくなるんだよ。身体だけの関係…それが大人だ。」
バキィ―――
「………っ………。」
白井が素早く蹴りを入れた。
重く鋭い。
骨まで響くようだ。
思わず腕を押さえる。
―――ただの蹴りじゃない……コイツの足は半端ない。いや……足だけじゃなく腕も…。
じっと白井の腕を見つめた。
「わかったか?ガキ。」
そう言ってまた蹴りが飛んでくる。
先輩はとっさにバックステップで間合いをとる。
バシィッ―――
「あがっ―――。」
が、白井の足がまた先輩の体に入った。
「あめーんだよ、考えが。テメェがどう動くかなんて手に取るように分かるわ。」
また、ヘラヘラと笑っている。
―――今一瞬、足が伸びた?いや、錯覚?違う…奴がずらしたんだ足を。ただ者じゃない…コイツは。
ゴクリと息を飲んだ。
「つうか、今時族とかはやんねーんだよ。」
「お前も族だろ。」
「いや、俺らは族じゃねぇ。…チームだ。喧嘩を楽しむな。」
「あんま、変わらないだろ。」
「あー、しゃべりすぎ。」
バシィッ――
「あんたもな。」
飛んできた拳を先輩が受け止めた。
そして、白井の胸元を掴む。
「うオらァッ――――!!」
シュッ――――
ドザァッ―――
勢いよくアスファルトに叩きつけた。
「ぐふっ―――」
白井が唾を吐き出す。
「きゃあぁぁああッ―――」
入口の女の人達が恐怖で悲鳴を上げた。
「族が流行ってるとか流行ってないとか関係ないんだよ。俺等は、バイクが好きで大切な奴等とバカやっていたいからつるんでんだ。それにこれから先も、上田さん達が作ったこの族をずっと守っていく。お前に否定される筋合いねーんだよッ!!」
いつも穏やかな先輩からは想像できないような声で先輩が哮(たけ)った。
「アホくせぇ……ますます潰したくなった。」
立ち上がった白井の目がギラリと光った。