第55章 男達の闘い
「……派手に暴れてくれたな。」
白井に近付いた先輩が唸るように言った。
口に出さなくても分かるほどの怒り雰囲気を醸し出している。
「暴れた?暴れてねーよ、軽い運動しただけ。」
立ち上がった白井は、吸い終えた煙草を足で揉み消した。
「この町が俺等の縄張りだと知っててか?」
「あぁ。でもまぁ、自分の女連れて来るとは思わなかったけど。」
白井が鼻で笑っている。
「俺の女じゃない。でも大事な人にはかわりない。」
先輩がチラッとあたしを見た。
「誰の女だとか興味ねーよ。でもまぁ、特攻服着てる以上"族"って事だろ?なら、あの女も潰す。」
ボキボキと拳を鳴らす。
「させるわけねーだろ、副総長として総長の女を守る義務……いや、義務じゃねぇ。あいつにたのまれたんだ。それに―――」
先輩は口をつぐんだ。
「総長の女?そいつはおもしれーや。つか、頼まれたとかいってホントは好きなんじゃねーの?お前が。」
ヘラヘラと白井が笑っている。
先輩は白井から目を反らした。
あたしは、遠くにいるため会話が聞こえない。
「あれ、図星?健気だな男の癖に。」
更に笑っている。
「何がおかしいんッスかね?」
それを見ていたあたしの隣に立つ兵隊さんが呟いた。
「まぁ、どっちにしても興味ねーわ。あっ、もしかしてアレか?極使天馬の性処理担当?ウケるわソレ。可愛いし飽きそうにねぇしな。やっぱ女はヤるだけのど――――。」
ドガッ―――
「ぐっ―――」
言いかけている最中、白井の顔面に勢いよく拳がめり込んだ。
先輩だ。
こめかみに青筋を浮かべ、激しく睨み付けている。
「…俺の事はどう言おうがかまわないが、彼女の事を悪く言うのは絶対に許さねぇッ!!」
先輩が吠えた。
―――誠也もきっとそう言うはず。たとえそう言わなくても、俺だけは絶対にコイツをゆるさねぇ。
どんどん額にシワが増えていく。
それは先輩の高まる怒りを表していた。