第54章 団結と侵略
「昨日はありがとよォ……。」
唸るように西村先輩が言った。
額に青筋を立てている。
「……やるの?クソつまんねーじゃん、お前。」
南がふぅーと煙を吐き出した。
「それは、昨日の話だろうが。今日の俺は違うんだよ。」
そう言って夜中の出来事を思い出す。
誠也がいなくなった後、悔しくて涙を流した。
自分の力の無さに悔やんだ。
悔やんで悔やんで悔やみまくった。
それで、吹っ切ったんだ。
負けることへの恐怖を。
負けたってかまわない。
だけど、男であるという自尊心と暴走族の幹部という誇りだけは無くさない。
―――俺は生半可な気持ちで"不良"をやってきたわけじゃねぇんだ。
「どう違うんだよ…あぁ、特攻服(とっぷく)ってことか。」
クックッと南が喉を鳴らしている。
「何がおかしいんだよ。」
「別に、クソつまんねーから…まぁ、相手してやるよ。」
立ち上がり足で煙草を揉み消すと、南はポケットからイヤホンを取り出した。
それを方耳につける。
「また…レゲエ(アレ)か。」
「問題ないだろ?クソよえーんだから。つーか、俺のレゲエ魂は否定させねぇけどな。」
「うるせぇッ!!だから、俺は爆音のロックが好きだって言ってんだろーが―――」
ドガッ―――
「――よッ!!」
南の頬を思いっきり殴る。
彼の顔が左を向いた。
「ロック?……クソ趣味じゃねーな。」
舌で切れた口角から出る血を舐めた。