第54章 団結と侵略
「おやっさんが……生かしてくれたんだ…俺を。……あの後、山の中に連れて行かれて、花村さんに拳銃で撃たれそうになった時おやっさんが言ったんだ。"ワシがコイツの最後を飾る"って。で、おやッさんが俺を撃った。」
坂下は涙を拭った。
「なんやて…親父が?」
「あぁ。でも、何故か生きてた。誰もいない山の中で目が覚めて、撃たれた所触って気付いた。………ゴム弾やったって。」
「ゴム弾!?……ホンマかそれ!?」
加藤は驚いた。
「でないと俺が生きてるわけないだろ。」
「そやな。」
坂下の言葉に納得したように加藤が頷く。
―――親父が助けるなんて…。
加藤は考えていた。
童次郎が本当はいい人だということは加藤は前々から知っていた。
しかし、いくらいい人とはいえ組の金を盗んだ相手に情けをかけるとかあり得るのだろうか。
そんな極道見たことない。
だが、親友を助けてくれた事は事実。
加藤は心の中で童次郎に感謝した。
「……でも、何で親父狙うんや。助けてくれたんやで?」
「………。」
「ハル。」
「……頼まれたんだある人に。」
再び坂下が額に手を当てた。
「誰に?」
「………言えん、それだけは。」
小さく呟いた。
「このままじゃ親父殺されてまうで!?それでえぇんかッ!?なぁ!!」
「ノブ。」
坂下が立ち上がり加藤を見た。
「……ごめん。」
一筋の涙を流す。
まるであの時の事がよみがえったかの様に。
そして坂下は走って病院を出ていった。
また、彼は加藤の目の前からいなくなった。