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レッテル 1

第54章 団結と侵略




「……何も喋ってくれへんのか?」

「………。」

「何で生きてるのかとか―――」

「………。」

「親父狙った理由とか。」

「………。」

「ワシかて超能力者やないさかい、言ってくれな分からんで?」

久しぶりに出した扇子を指で弄(もてあそ)ぶ。
先程から何度尋ねても返事はない。
ただ、独り言を言ってるように聞こえる。

「………でも、忘れられんわ。お前が最後に見せた顔。」

ピクッ―――

彼の言葉に坂下が反応した。

くしゃァッ―――

彼の荒れた指が頭を抱えている。
ボサボサの髪がさらに乱れる。

「俺は………。」

小さく口を開いた。
声が掠れて、震えている。

「俺は……また……おやっさんに…迷惑を――助けてもらったのにッ!!」

ポタッ―――

ポタッ―――

床が湿った。
その根元をたどれば、坂下の目にたどり着いた。
薄汚れた顔の中にある目から無着色の液体が滴り落ちている。
涙だ。

「…どういうことや?」

加藤の瞳が動揺している。

また、思い出したのだ。
坂下が最後に流した涙を。

残像が目に焼き付いている。



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