第54章 団結と侵略
「…何が伝説だよ。いいヤツじゃねぇか、坂下のオッサンは。」
誠也君が呟いた。
「どこがジャ。極道がそんなあまっちょろいことやってたら生きてけんのジャ。この世は弱肉強食。喰うか喰われるかや。……所詮ガキやの、おどれは。」
鋭い目付きで善司さんが誠也君を見ている。
「でも…そんな甘い人が極道の世界に一人ぐらいいてもいいんじゃないですか?だって―――」
――皆悪い人なんてそんなの辛い。
あたしは口をつぐんだ。
ずっと黙っていたのに急に口を開いたせいか、皆が驚いている。
「あんなぁ…嬢ちゃん。極道は慈善事業とは違うんジャ。恐れられてこそナンボなん、…わかるか?」
「でも――。」
「…彼女の言う通りだ。一人ぐらい…そんなヤツがいたって構わない。極道は"恐れ"が全てじゃない。時には"義理"や"人情"も必要だ。民間から恐れられるのも事実だが、民間を影から守るのも俺達の務めだと俺は思っている。」
宗次郎さんが淡々と言った。
「だーかーらー、岩中は甘ちゃん言うんジャ!!なにが、影から守るや!!そんなんじゃ食ってけんのジャッ!!」
善司さんの眉間に大量のシワがよった。
「まぁ、人それぞれ考え方が違う。仕方ないが……岩中の侮辱は許さんと言っただろ、善司。」
鋭い目付きで宗次郎さんが善司さんを見た。
「うるさいのぅ。」
善司さんがガシガシと頭を掻いた。