第54章 団結と侵略
「……ジブン生きとったんなら何で連絡くれへんかったん。」
缶コーヒーを握りしめ、俯きながら加藤が呟いた。
「………。」
しかし、坂下さんは答えようとしない。
二人の間に重い空気が流れている。
「アイツ知っとるわ、坂下言うたら西條会じゃ有名な奴ジャ。」
善司さんがチラリと坂下さんを見て言った。
今、あたし達は二人から離れた所で坂下さんのことについて話している。
「なにが有名なんだ?」
宗次郎さんが善司さんを見た。
「あぁ、ワレが極道入ったんは四年前やったな。知らんのも無理ないわ。6年前、アイツ岩中組の金一千万くすねよったんジャ。それだけやない。その金、岩中興業に借金しとる奴に配ってまわっての……プッ……思い出すだけで笑けるわ。」
「だから、なにがだ。」
強い口調で宗次郎さんが続きを促した。
「あー、すまんすまん。それでな、そのもろた奴何したと思うか?」
「知らねぇ。早く言えよ、鼻傷オッサン。」
誠也君が不機嫌そうに言った。
「だから、誰がオ――」
「くどい、早く言え。」
宗次郎さんも不機嫌そうだ。
「……なんやおどれ等――まぁ、えぇわ。そいつ等な、その金で豪遊しとったんジャ。まぁ、無駄骨っちゅうヤツじゃな。ある意味伝説になった話やな。債務者のヒモ男として。ついた名前が"ヒモ男伝説"ジャ。」
カッカッカッと善司さんが笑っている。
全くもって何が面白いのかわからない。
むしろ、坂下さんが不愍(ふびん)に思う。
その証拠に、誠也君も宗次郎さんも建一君も眉間にシワを寄せている。