第54章 団結と侵略
今、豪龍会の一部の若い者達の中では派閥が出来ていた。
しかし、年配の者たちはそれを知らない。
影で、江田が率いる"殺虎(やっこ)"という組織が出来ているのだ。
殺虎というのは江田の背中に彫ってある虎の入れ墨から名前をとったもの。
"虎のように勇ましく、相手を喰らう"
という意味だ。
「ちゅーか、リュウとヨシは?」
キョロキョロと上谷が周りを見ている。
「アイツは先に行かせたんや。」
「何で?」
「……それは、まだ言えんわ。」
江田はそう言うと煙草をくわえた。
「そういや、最近猫がよう迷いこむのぅ。」
「は?」
ジッポーで煙草に火をつけながら呟いた言葉に、皆が首を傾げた。
「こそこそ嗅ぎまわって…まぁ、わしゃ猫ぐらいやったらかわいがったるわ。」
煙を口から吐き出す。
「何の話だ?」
滝田が不思議そうに彼を見ている。
「まっ、猫は泳がしときゃぁえぇんや。」
江田が不気味に笑った。