第6章 思い出
「あら、そう。」
ママはそう言うと部屋を出ていった。
「危なかったー。」
棗がホッとしたようにため息をついた。
「なんで?」
あたしはその様子が不思議でならなかった。
別にママに隠す必要があったのだろうか。
「は?お前馬鹿?」
「は?」
「お袋があんなもの見てみろ。ああいう性格だからすぐ親父にしゃべるぞ!!」
興奮気味に言った。
あたしのママは美人だがおっとりしていて少し抜けている。
"天然"と言った方が早い。
「あ、そっか。」
「親父が知ったら最悪だ。お前の彼氏が暴走族の総長だって知ったら倒れるにきまってる。」
「うん。」
「だから絶対にお袋と親父にはいうなよ!!」
真剣な表情で棗はあたしを見た。
「わかった。」
だからあたしも真剣な表情になった。