第54章 団結と侵略
バコッ―――
ドサァッ――
カラカラカラ――
加藤の拳が男の頬にめり込む。
男は豪快に床に倒れた。
「なんで……なんで生きとんのや。いや、そうじゃなくて……なんで親父ねらうん。」
苦しそうな表情で加藤は男を見下ろした。
フードが脱げたボサボサ頭の無精髭を生やした男は、殴られた頬を押さえてジッと床を見つめている。
口を開こうとはしない。
「お前また……過ち犯すんかッ!?」
再び、加藤が拳を上げた。
「どうしました!?」
すると、奥から夜勤の看護師が走ってきた。
床に転がった拳銃を見て驚いている。
「………なんでもないねん。」
加藤はそう言うと、拳銃を拾った。
「でも……それは―――」
看護師が口を押さえている。
「……エアーガンや。最近のエアーガンは性能エエねんな。」
「はぁ……?」
ニイッと笑う加藤に看護師は首を傾げた。
「ほら、ハル。…行こか。」
男の手を取る。
「………。」
男は無言で立ち上がった。
そして、ICUを後にした。