第54章 団結と侵略
その頃。
「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……。」
パーカーのフードを顔を覆い隠すように被った男が、ICUの部屋の前に立っていた。
手には黒光りする拳銃を、ギュッと握り締めている。
呼吸を見出し何度もICUの扉に手をかけていた。
開ける勇気がない。
いや、ないわけではない。
僅かな良心が彼を抑制しているのだ。
不幸か幸いか、見張りは寝ているし看護師も何故かいない。
世間が……いや、その場の空気が彼の背中を押しているのだろうか。
「……すいません……親父。」
男が小さく呟いた。
吹っ切った様に、扉を開ける。
そして中へ入りゆっくりと拳銃を向けた。
「……すいません。」
ワナワナと手を震わせながらまた男が呟いた。
引き金にゆっくりと手をかける。
「……すいません。」
またそう言って引き金を引こうとした。
「やめんかいッ!!」
しかし、男の手からあっさりと拳銃が取り上げられた。
「なんで……なんでお前がここにおるんや……
……ハル。」
加藤が小さく呟いた。